モー大変、みんなで天にお祈りをしよう:牛耳るの語源
- 弓長金参
- 1月9日
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「牛耳る」ということばがあります。
なんらかの場面で主導権をにぎる人物を形容しますが、なぜ「牛」の「耳」なのでしょうか。
これには、古代中国の風習が関係しました。

今から2500年ほど前、「春秋時代」という中国大陸全土を140もの大小の諸侯が分割統治をした時代がありました。
名目上、洛陽に鎮座をする周王がトップに君臨していますが、実質はそのときどきの有力な大諸侯が中小諸侯に号令をかけて歴史が動きます。
大諸侯は時折、近隣の中小諸侯を招いて諸侯間の全体会議をしました。これを「会盟(かいめい)」といいます。
この会議で決まったことを天に向かって皆が守ることを誓う、盟約の儀式のときに、生け贄の牛を捧げました。
この牛には純色の毛並みでキズがないオスを厳選します。
当時はいろいろな場面で生け贄に牛、羊、豚などの家畜を捧げました。なかでも牛は一番価値のある家畜として認識されていたため、重要な場面の生け贄に用いられたのです。
盟約の儀式では、まず牛の耳を切ります。その流れ出た血を皿に取り、会議に参加をした諸侯が回し飲みをする「歃血(そうけつ)」という風習がありました。
このときの耳を切る役は、その場にいるなかのトップ、つまり会盟を呼びかけた大諸侯になります。他の諸侯はこの大諸侯の指示通りに動きました。
ここから「牛」の「耳」で「牛耳る」ができました。当然、中国語も「牛耳」と書き、意味も同じです。
ちなみに「生け贄」は中国語で「犠牲」と書き、「犠」は純色を、「牲」はキズのない五体満足を表意した漢字です。
民族が違えば盟約の方法も違います。
北方にいた騎馬民族の、人の頭蓋骨を器に酒を注いで飲み回す「弾骨(だんこつ)」や、まだ中華文明がそれほど浸透していなかった中国南部の民族の、自身の肩や腕を切り、その流れ出た血をすすり合う「契臂(けいひ)」の風習がありました。
牛は古代中国独自の星座、「二十八宿」にも縁があります。
現在の星座でいうとやぎ座βにあたる恒星を、「牛宿(ぎゅうしゅく)」と銘々しました。「牽牛(けんぎゅう)」ともいい、七夕伝説の元ネタのひとつにもなっている星です。
さらに『西遊記』にも「牛魔王」という重要キャラクターが登場するなど、牛は漢民族にとって古代から縁の深い家畜でした。
牛は雄々しい体格で、威風堂々としたたたずまいをしています。ですから、中国語の「牛」には“レベルが高い”“すばらしい”というニュアンスも含意しているのです。ネットスラングにも「大牛」ということばがあり、ハイレベルな人物を指します。


