きらわれものは爪を隠す──ヘビの生態系──
- 弓長金参
- 2023年10月29日
- 読了時間: 3分
更新日:2024年9月16日
見た目の不気味さ、毒をもつ怖さからきらわれもののヘビですが、手足のない独特なボディやその生態系に興味をそそります。

ヘビに手足がないのは、地中にもぐる習性があったトカゲの一種が、もぐりやすいように退化したからです。
1億数千万年前、恐竜が闊歩(かっぽ)した白亜紀前期になります。手足がなくて不便に見えますが、体をくねらせ、すばやく移動できるように進化しました。

過酷な生存競争を生き抜くため、ヘビは2つの進化の過程をたどります。
ひとつはオーソドックスな「巨大化」です。
体長1~2メートルほどの原種“テコドント”を起点に、恐竜が巨大化したように、ヘビも巨大化しました。現在も生息するアナコンダやアミメニシキヘビなど、大きいものは10メートルほどになります。
もうひとつがおなじみの「毒を持つ」です。
ヘビの毒は、唾液の消毒作用が強化したものです。

人間のつばには、口のなかの乾燥を防ぐ効果とともに食べ物の消化を助け、雑菌を消毒する作用もあります。つばは微生物にとって“毒”になります。
この消毒作用が強化し、人間もふくめ動物を殺傷する能力を得たのがヘビの毒です。最大の毒ヘビはインドに生息するキングコブラで、体長が5メートルになります。
確かに巨大ですが、アナコンダより小型です。
猛毒を得ているため巨大化する必要がなく、それほど大きくなりません。生物の生存競争は他の生物とバランスを取る必要があり、あまりにもかんぜん無敵な生物は他の生物を圧倒し、結局、自身のえさがなくなり自滅するからです。“過ぎたるはなお及ばざるが如し”。なにごとも“中庸(ちゅうよう)”がよいのでしょう。
ヘビの最大の敵は「ヘビ」です。
ヘビのえさといえばカエルやネズミなどの小動物をイメージしますが、えさをかみ切ることができず丸のみするため、手足のある動物は食べにくいのです。ヘビが一番食べやすい動物は、必然的にヘビになります。

ヘビは夜も活発に活動する“夜行性”の動物です。
夜も周囲の状況がわかるのは、頭の前方に「ピット器官」という赤外線センサーがあり、周囲の状況を温度差で把握します。生きている動物は体温が高く、隠れても見つけることができます。
ちなみにヘビの「しっぽ」はどこになるのでしょうか。
動物学でしっぽは、“肛門から先の部位”を指します。ヘビの肛門はあたまから3分の2ほどのところにあり、うしろの3分の1ほどがしっぽになります。
日本で猛毒のヘビといえば沖縄のハブが有名ですが、中国では「百歩蛇(ひゃっぽだ)」が猛毒で有名です。
“かまれたら百歩あるかないうちに死ぬ”、から命名しました。台湾島や中国大陸の南東部や南西部など、亜熱帯かつジャングル地帯に生息するヘビです。

一方でヘビは“龍の子”とみなし、神聖視する文化が日中両国にあります。
ヘビが生息する場所は水気があり、草木がしげる豊かな自然環境が多く、“めぐみをもたらす神の使い”、豊かさの象徴と考えたのです。