無限に落下する宇宙飛行士:宇宙にも重力はある
- 弓長金参
- 2022年5月4日
- 読了時間: 3分
更新日:4月19日
風船のように漂う宇宙遊泳。宇宙空間は地上から遠く離れ、地球の重力がかからない。

そう思いがちですが、宇宙空間にも地球の重力はシッカリとかかっています。
重力は距離の2乗に反比例します。地上から離れ、高度が上がるほど、地球の重力は小さくなります。
地上に比べ、宇宙空間の重力が小さいのも事実です。
日本人宇宙飛行士も活躍する実験施設「国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)」の高度は400km。東京-大阪間ほどの距離です。
ISSにかかる重力は地上の約90%。ISSにも十分重力が働き、地上の物体同様、常に地球が引っ張っています。

それでもISSは宇宙空間に漂っています。
それはISS自体が高速で移動しているからです。
ISSは時速2万8000kmの速度で進んでいます。その「遠心力」の『←』方向の力と「重力」の『↓』方向の力が差し引きされ、『↙』方向の斜めに落下します。
しかし落下先(着地点)が地球の外に位置するため、いつまでも落下(着地)できず、地球の円形に沿って移動し続けています。
この「円運動」の現象から、斜め前方に落下し続けるISSは、見た目には落下せず地球を回り続けているのです。

落下し続けるISS内は「無重力」となり、人や物が浮きます。遊園地のアトラクションやエレベーターで、一瞬、体が軽くなるのと同じ原理です。
「重力」・『↓』よりも「遠心力」・『←』が小さいとISSは地球に落下し、大きいと地球の軌道を離れ、永遠に遠くへ飛んでいきます。
重力とのバランスを考慮し、ISSの高度や速度を決めています。

遥かに遠いISSですが、実は肉眼でも見えます。
具体的な日時はインターネットで公開していますので、肉眼でISSを一度ご覧になってはいかがでしょうか。
天気予報でお馴染みのひまわりなどの「静止衛星」も同じ原理です。静止衛星は、地球の自転に合わせ1日1回回ります。地上から見ると常に止まっているため、“静止”衛星と言います。

ISSも静止衛星も、地上では不可能な高速移動をしています。
宇宙空間の空気が地上に比べ薄いため、それが可能になります。地上と同レベルの空気密度なら、空気との摩擦ですぐに消滅してしまいます。
ISSも静止衛星も地球目線で見たときの円運動ですが、さらにマクロ目線で見ると、地球も太陽に向かい、常に落下しています。

太陽を年1回公転する地球の速度と、太陽の重力とのバランスが保たれ、太陽に落下せず回り続けているのです。
近年過熱する宇宙開発ですが、発展とともにデメリットも顕在化しています。
問題のひとつが人工衛星の急激な増加です。2021年時点で累計1万2000個とあります。近年では、年間1000個以上も打ち上げています。

宇宙空間の人工衛星は基本的に打ち上げっぱなし。数多の人工衛星同士の衝突も発生し、劣化したものは地球へ落下し、海に落ちます。海に不法投棄するのと同じです。
因みに「宇宙」と「地球」の境界はどこでしょうか。
地球を覆っている空気層(大気圏)は、高度が上がれば薄くなります。宇宙の定義を「真空(に近い)状態」とすると約100km上空となり、そこから上が「宇宙」になります。
近代に始まった宇宙開発ですが、宇宙の言葉自体は古代中国からありました。

紀元前3世紀の思想家荘子(そうし)の言語録・『荘子(そうじ)』に記載しています。
「宇」は前・後・左・右・上・下の空間、「宙」は過去・現在・未来の時間を表わします。無限の空間と時間、つまり天地すべてを表現した言葉です。