灯台下暗し––日常よく使うことばほど分からない––
- 弓長金参
- 2023年10月29日
- 読了時間: 2分
“日常よく使うことばほど意味が多様化し、翻訳がむずかしい”。翻訳者あるあるです。

「テンション(Tension)」「クレーム(Claim)」「コンプレックス(Complex)」と、日本語化した英語は、ほんらいの意味からずれていることが多くあります。
英語ほんらいの意味の“一部”が日本で広まったためです。英語の原紙に見慣れたことばがあると、うっかり日本でおなじみの意味で解釈しがちです。
“中国語は日本語と同じで「漢字」を使うため、字面で意味が分かる”。
そこも落とし穴があります。
日本語の「足(あし)」と「脚(あし)」は、指す部位が違います。足はくるぶしから先で、脚はふとももからつま先までぜんたいを指します。

中国語の「脚(ジアオ)」はくるぶしから先で、ふとももから下ぜんぶは「腿(トゥイ)」といいます。もちろん「足(ヅゥ)」もありますが、体を表わすとき、あまり使いません。
ゆびの名称も若干違います。
親ゆびは「(大)拇指((ダァ)ムゥヂー)」、人さしゆびは「食指(シーヂー)」で、日本語も“食指が動く”と使います。中ゆびは「中指(ヂォンヂー)」と同じで、小指は「小(拇)指(シアオ(ムゥ)ヂー)」です。
残りの薬ゆびは、“名なしのごんべえ”で「無名指(ウゥミィンヂー)」といいます。

英語が得意な人に“人さしゆびを英語でなんというか?”と聞けば、おそらく即答できないでしょう。ちなみに「Index finger」といい、意味は“指し示すゆび”で同じです。
身近なことばほど多様化しやすく、うっかり字面で判断すると誤訳してしまいます。身近なことばほど教科書や書籍で触れず、意外と知らないことが多いものです。