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多重人格の悲劇––キャラ設定は明確に––

  • 執筆者の写真: 弓長金参
    弓長金参
  • 2023年9月15日
  • 読了時間: 2分

更新日:2025年7月7日

 文芸翻訳では特にそうですが、登場人物のキャラ設定はとても大切です。

キャラ設定

 原稿に「」とあれば“わたし”“おれ”“ぼく”など、「You」なら“あなた”“きみ”“お前”など、キャラにマッチする口調を決めなければなりません。

 あいまいなまま訳すと、活字化したときブレが生じます。


 たとえば、登場人物が10代前半の少年とします。

 都会に住んでいますがあきらかに下町育ちで、教養もないやんちゃ坊主です。この下町のわんぱく少年を、“男の子”だからと条件反射で「ぼくが思うに……」「きみがそう言うなら……」ではどうでしょう。気どった感があります。

 正確な逐語訳をよしとする“語学試験”では満点ですが、「翻訳文」では不合格です。

「おれ思うんだけどさ……」「おまえがそう言うんだったらよ……」の方が自然な生きた言葉です。

下町

 原稿を基に、人物のルックス、ファッション、キャラ、教育・生活レベルなどを、自分なりに設定しなければなりません。翻訳者には、原稿から諸々を想像する想像力も必要です。


 以前、“お嬢さまの冒険家”の登場人物のセリフを訳しました。

 キャラ設定を、“お嬢さまなのに男勝り”にするか、“男勝りなお嬢さま”にするか、このわずかな差をあいまいにしたまま訳しました。

お嬢さまの冒険家

 翻訳会社の担当者からセリフにブレがあると指摘され、見直すと確かにブレていました。

 要はベースとなる部分が“男勝り”なのか、“お嬢さま”なのかが不明確で、言い回しなどが統一しておらず、セリフごとに多重人格者のようなキャラになっていました。

 内容があっていればOKではなく、活字化すると隠れた内面も露わになるのです。

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