top of page

書籍は一卵性『多』生児––「何版目」か必ず確認しましょう––

  • 執筆者の写真: 弓長金参
    弓長金参
  • 2023年5月13日
  • 読了時間: 2分

更新日:2024年6月8日

 以前、出版社の編集者から、下記の問い合わせがありました。

 提出した訳文の文言について、“編集者の手元にある書籍の原稿に記載がない”とのことです。問い合わせを受け、訳出の土台にした書籍の原稿を見ながら、指摘箇所の訳文を確認しました。やはり私の持っている書籍の原稿には、訳文どおりその文言があります。

可能性として編集者の持っている書籍の原稿と、私の持っている書籍の原稿のが違うのでは”と回答すると、案の定そうでした。これで一件落着です。

 出版翻訳では、訳出する書籍の原稿が「何版目」かを確認する必要があります。

 今回はすでに書籍化した原稿で訳出しましたが、書籍化前の「最終稿」で訳出する場合は、更に注意が必要です。

 出版翻訳は何か月にもおよびます。

 訳出の途中で、最終稿に原作者が手直しを入れる可能性もあります。そうなると、私が持っている最終稿が手直し前なのに対し、編集者の持っているものは手直し後など、最終稿のバージョンが違ってきます。

 翻訳の元になる原稿は関係者の間で統一しているか、気をつけなければいけません。

ほぼ同じだが、細部を見ると違う”、正しく「一卵性双生児」のような“ほぼ最終稿のような原稿”が、いくつも存在します。

​ しかも2つではなく、それ以上存在している可能性もあります。翻訳者や編集者で違うバージョンの原稿を使うと、今回のような齟齬(そご)が生じてしまいます。

 ちなみにこの「」ですが、初めて印刷したものは「初版(しょはん)」、なにかしら手直ししたものを逐次「第2版」「第3版」……と言い、第2版以降を「重版(じゅうはん)」と言います。

 似た言葉に「初版第5」などの「刷(ずり)」があります。これは書籍の売れ行きがよく、原稿の手直しなしに、単に増刷したときに使います。

bottom of page