甘そうで辛い:カバーや帯の翻訳
- 弓長金参
- 6月30日
- 読了時間: 2分
出版翻訳で意外と苦戦をするのが、「カバー」や「帯」などのプラスα部位です。本文と同様に、カバーや帯の文言も逐一訳出しなければなりませんが、これが大変です。

通常の出版物のカバーや帯は簡潔にして読者の注意を引く、「キャッチコピー」的な文言で書かれています。この読者というのが原稿を読める読者、つまり国内の読者です。
中国語書籍であれば、中国人読者がわかり、かつ興味が湧く文言になっています。
たとえば、「魯迅文学賞作家の○○も大絶賛」「CCTVの番組でも大好評」などです。
魯迅文学賞は中国を代表する文学賞のひとつで、CCTVは中国中央電視台という国営放送局です。
このように代表的な組織名や賞なら問題ありません。
手こずるのはマイナーな賞や単発イベントなど、いくら調べても「定訳」がないものです。
文字数自体は少量ですが、意外と調査に時間がかかり、できる限りマッチする日本語をひねり出さなければならず大変です。
悲しいことに苦悶の末に訳出したとして、それがそのまま使われることもありません。翻訳書に「魯迅文学賞」「CCTV」と書いてあっても、日本人読者にわからないからです。
しかし、これらの翻訳がまったくの徒労になることもありません。
訳文を踏まえた上で、出版編集者の方がうまいぐあいにキャッチーな日本語にまとめてくれるからです。原稿を知っている訳者からすれば、“なるほど、あの文言をうまく変換したな”と感心します。
つまり、翻訳書のカバーや帯の文言は翻訳者が訳出したものではなく、出版編集者の方が考えたものも多くあるのです。


