“さじを投げた”機械の気持ちになっとく––中国語の「機械翻訳」の現状––
- 弓長金参
- 2023年5月13日
- 読了時間: 3分
更新日:2025年8月17日
昨今、機械翻訳の技術がすさまじい勢いで進歩しています。

翻訳語のメイン・英語は、アメリカやイギリスなど英語を母国語とする国以外も、ひと通りどの国も母国語の次に使用し、実質「国際語」になっています。
今も世界中で、砂浜の砂粒のように無数に作られる英語の文章をデーターベース化し、機械翻訳へ落とし込んでいます。
世界中から英語の知識を吸収し続ける今の機械翻訳は、語彙(ごい)力はもとより、文章力や俗語・スラングなども各段に向上しました。

機械翻訳の文章は、かつての“意味はなんとなく分かるが、ガチガチの直訳文”ではなく、「て・に・を・は」の助詞も自然な、“スムーズに読める”レベルになっています。
“機械翻訳の躍進で翻訳者は仕事をなくす”と、翻訳業界でよく話題に上ります。
実際はどうでしょうか。
知人の英語翻訳者は、機械翻訳した文章のチェックや、手直しの仕事をメインにしています。これを「ポストエディット(Post Edit)」と言います。
他の翻訳者も、以前はアナログ的に逐一翻訳文を紡ぎ出していたものを、機械翻訳ソフトを活用し、まず機械翻訳文を作ります。
その翻訳文を、自身の翻訳力でブラッシュアップして仕上げるそうです。

逆のパターンもあります。
先に自身で翻訳文を作り、機械翻訳にかけ、誤字・脱字チェック、誤訳・訳抜けチェック、言い回しがつたない箇所の洗い出しなどに活用し、作業を効率化しています。
現状、翻訳者は“機械翻訳とうまく付き合おう、むしろ活用しよう”、というスタンスが多く見られます。
この前、中国語を日本語に機械翻訳した文章のポストエディットをしました。

英語同様に中国語も機械翻訳の文章ながら、なかなかスムーズな文体でした。が、中国語特有の問題もありました。
中国語はものごとを形容するとき、「四字熟語」でよく表現します。
機械翻訳ではこれができません。モロ直訳で意味不明です。
例えば“山河がきれいなこと”を形容する「山紫水明(さんしすいめい)」を、“山は紫で、水は明るい”などと訳しています。

面白いことに、その強引な直訳の四字熟語と前後の文章がつながらず、機械翻訳が“あきらめた”のか、そのあたりの文章全体がゴソッと訳抜けしていました。
「漢詩」は直訳のオンパレードで完全にアウトです。結局、ポストエディットというより、中文日訳の仕事になりました。
このように中国語の機械翻訳はまだ課題がありますが、近い将来、これらの課題も解決すると思います。
以前は翻訳業界でかなり警戒した機械翻訳ですが、現実問題、世の中に浸透する機械翻訳の流れは止まらず、翻訳者はむしろ機械翻訳と「共存共栄」を図(はか)っています。
新しい事物(じぶつ)にはだれしも警戒します。
それをやみくもに嫌い、排除するのではなく、自身に取り込み、ともに歩む。どの業界にも当てはまる進歩の法則と言えます。

